3年目の子育てネットとまちづくり


---いつでもどこでもみんなで子育てを目指して---


『2年間の活動を振り返って』


 私たちの町、西成に子育てネットが誕生してちょうど2年たちました。(2000年5月発足)ミニコミ紙(機関紙)の「ハギッズ」も軌道に乗り、6000部発行の愛読者も増える中、第9号まで発刊しました。もう一つの情報源である「ホームページ」も今年3月の第3回子育ての集いに合わせてスタートしました。早速ホームページ上で子育て相談や情報交換が飛び交っています。2月に完成した「子育てマップ」も子育て中の親や関係施設にとっては貴重な情報の一つです。これは親たちやネット加盟の職員たち「みんなで」作り上げた労作です。ネットの目標である「いつでもどこでもみんなで子育て」を推進るために欠かすことのできない情報の伝達と交流はこのような様々な事業や活動をとおして一歩一歩前進しています。


 「どこでも」も一つ実現しました。西成区の南部にある玉出地区の会館が地域の親子に会場を提供してくれたのです。この実現のために地域の連合町会や社協、それに民生委員会等が積極的に協力をしてくれました。親や子育てサークルが気軽に集まれる場所を区内のいろいろなところにつくることが私たちのネットの大きな活動の一つですがその第1号というわけです。


 ネットの会合で一つの家庭のケースが報告されました。事情で二人の子どもの子育てをすることになった父親が仕事にも行けず、このままだと子どもの施設入所が避けられない状況になってきたというケースですが、そのとき出席していたネットのメンバーから、父親が仕事に行けるようみんなで交代して支援しようという提案が出されました。父親が仕事に出る朝6時から保育園が始まる時間までメンバーが交代で世話をしようということです。この「みんなで」の提案に対し、父親は崩壊寸前の家庭の状況を自ら立て直す決心をし、数日後にはその行動に出ました。「みんなで」の気持ちが父親の心を動かし、一家離散をなんとか踏みとどまらせたのです。


 ある日、一人の母親から電話がありました。いつも通る商店街で毎日のように見かける気になる子どもがいるということです。いつも夕方のころ、姉弟3人がゲームセンターやその周辺で長時間遊んでおり、服装などの身なりも気になるということです。すぐに飛んでいって事情を聞いてみるとお母さんが夕方から仕事にいって、夜は放ったらかしの状態のようです。一番下の子どもは即、保育園に入り、上の二人の小学生は学校と連絡を取り合って今後の対応を相談しました。まったく関係のない一人の母親が他の子どもの姿に心を痛め、それを受けた関係機関や施設が連絡を取り合うという行動は「みんなで」の精神そのものではないでしょうか。

 

『排除でなく、包み込む運動を』


 私たちの子育て町づくり運動はこの2年間、@ 福祉施設や地域の集会所などの公共施設を利用した子育てサークルづくり運動。(仲間づくり) A 子育てサークルの親たちや、子育てに関わる関係機関(施設)同士の情報交換や連携活動の強化。(ネットワークづくり)そして、B 保育所や児童館などの地域福祉施設や町の会館などが相談事業や遊び場を提供したりする地域の子育てセンターを増やす活動。(センターづくり)を進めてきました。


 子育ての主役である親たちが子育てを楽しくするための色々な工夫や取り組みもネットの中や外で数多く見受けられました。3回目の子育ての集いや2年目の子育て実習の会は年々盛況を増し、サークル交流会や音楽会などもたくさんの親子で賑わいました。


 「集い」では親たちのリサイクルコーナーが大人気で、この5月にはそれが発展して第1回フリーマーケットが親たちの手で開催されます。先に紹介したホームページも親たちが掲示板などを活用したり、中にはホームページ委員会のメンバーになってスタッフの一員として活躍している母親も出てきました。私たちのネットが大切にしているのは仲間づくりやサークルづくりが特定の個人的な関係だけで終わらないようにしてほしいなということです。今の社会の課題の一つに人間関係の希薄さ、過疎化現象があります。朝、近所の人とどれだけ朝のあいさつを交わしていますか。先ほどの母親のように他人の子どもの姿に心を痛めることがあるでしょうか。子どもと公園で遊んでいるとき出会った、見知らぬ親子に声を掛けることがありますか。私たちはネットの運動の柱として「仲間づくり」を掲げていますが、その精神は「排除でなく、包み込む」ことです。この社会的な仲間づくり(ソーシャルインクルージョン)こそが「いつでもどこでもみんなで子育て」のまちづくりにつながっていくと思います。

 

『47団体+社会的仲間+α=虐待0(ゼロ)』


 子育てサークル(6)ボランティアグループ(2)大阪市子育て支援事業(2)官公署等(8)病院(1)人権関係(2)児童・青少年施設(5)公立保育所(14)私立保育園(7)の計47団体がネットのメンバーです。職場はもちろんのこと、職種、身分、経験、立場、年齢など実に多種多様な仲間たちです。逆にこれだけの人たちが力を合わせるとなんでもできそうです。実際に事業の際の役割分担などそれぞれの持てる力を存分に発揮してくれています。3月の子育ての集いには47団体から100人がスタッフとして参加しました。


 11月から2月にかけて児童虐待防止のための研修会(4回シリーズ)が開催されました。夜、勤務が終わった保育所や保健センター、病院、児童館、青少年会館の職員やそれに母親たちが毎回、数十人集まり熱心に学習しあいました。ネット自体が「虐待防止ネット」の性格を持っているのですが、より「虐待」に焦点を当てたネットワークを小地域に作っていくことをこの研修会で確認しあいました。私たちのネットは数だけ多ければいいというものではありません。なにをするかです。なにを目指すかです。


 今日も虐待の形跡らしきものがある子どもが見受けられました。子どもを守り、子育てに悩む親を援助するという活動は施設や役所だけでは成り立ちません。社会的な仲間づくりの意識を持った親たちがいっぱい増え、地域の中の主任児童委員さんをはじめとする町の子育て応援団の人たちとともに「虐待0の町」づくりを進めましょう。


 2年前、生まれたばかりのこのネットは対象を当面「乳幼児」にしぼりました。当時4〜5歳の子どもたちは当然、小学生になり新たな子育ての問題も出てきました。中高生の問題も児童館やトモノス、それに青少年会館などでは以前から気になることでした。 いっぺんになにもかもできませんが、できるところから少しずつの気持ちで関係施設も連絡を取り始めました。障害児の親のグループづくりも障害者会館や関係施設、公的機関で具体的な計画を模索中です。自分だけでやろうとすると大変です。「いつでもどこでもみんなで」を会いことばに2歳らしくボチボチ歩みましょう。

 

2002年5月  わが町にしなり子育てネット代表 小掠 昭